2017年10月24日火曜日

偽造品対策で「著作権」を使ってみる

オンラインで販売されている偽造品に対して、警告や販売中止の請求をすすめて暫くたつと、商標がはっきりと表示された「堂々とした偽物」の商品画像はだいぶ減ってきます。

ところが、商標の部分を加工した商品画像が使われるようになったり、商標を隠した出品がどっと増えてきます。

そうすると、こちらとしては不正競争防止法(商品形態模倣行為や周知表示混同惹起行為)で出品者に警告したり、試買して実際の商品にロゴが付いているかどうか確認したりということになります。

さらにすすんで、最近では、侵害品のオンライン通販に、弊社のカタログ画像(弊社の著作物)が無断使用される事例が出てきました。また、並行輸入品やリパッケージ品にも本物の画像が使われることもあります。

そこで当社では、このような事例では、著作権に基づく差止請求や損害賠償請求も行っています。

ところが、商品画像には著作権が生じないという見解もあります。(刑事事件では、そういう解釈でよいかもしれません。)しかし、商取引の実務や民事の裁判例(追記参照)では、著作物の創造性の要件を広く解する傾向にあります。著作権者としては、ごく普通のブツ撮り画像であっても著作物として権利主張しても、まず大きく空振りする可能性は低いでしょう。損害賠償はともかく,少なくとも画像削除などの差止請求は認められるでしょう。

また、ブツ撮り写真が著作物であるとした場合は、その転載や複製が適法な使用(引用等)に当たるかどうかという問題もあります。さらに、米国など国外の著作権法の解釈ですと、いわゆるフェアユースとの関係も問題になってきます。

例えば、本物の商品を売るために、メーカーが用意した商品画像を無断で使ってよいかというと、いろんな見解が出てきそうです。ところが、ニセモノを売るためにメーカーの商品画像を無断で使用してよいかというと、著作権の問題だけでなく、不正競争防止法や場合によっては景表法の観点からも問題となりえます。

2017年9月19日火曜日

Alibaba IP Protect Platform

偽物ばかり売っている印象の alibaba グループのショッピングサイト (aliexpress, taobao など)ですが、グループ全体で知財侵害を申告する仕組み(プラットフォーム、平台)をもっています。

eBayのVeROやamazonのBrandRegistryのような、予め権利者の知財を登録しておいて、オンラインで侵害の報告をするプラットフォーム "Alibaba IP Protection Platform" というものです。

登録は、オンラインでできます。日本の企業でもアカウント開設が可能ですし、また、商標権は、中国内地以外の登録でも受け付けられます。(ただし、現地で冒認商標の登録がある場合は、登録又できないか、侵害の報告に対して異議を申し立てられる可能性があります。あくまでも中国内地(大陸)のセラーをターゲットした申立制度なので、このあたりは仕方ありません。)海外のほかに、香港、マカオ、台湾(中華民国)の商標に基づく申立も可能です。

なお、タオバオ(taobao.com)とアリババ(1688.com)は、中国国内専用マーケットという位置づけから、侵害申告には、中国大陸の登録商標が必要です。

IPPは、中国語と英語に対応しています。

まず本人性の確認(登記や個人の身分証)をして、その後商標権など知財の確認が完了すると、IPPにログインして侵害の申告をすることができるようになります。IPPでの申告は、URLを貼り付けて仮に(下書きとして)侵害品の出品データを登録して、その後、本番の申告をするという順序です。申告に対しては、概ね問答無用で出品削除なのですが、出品者には3日以内の異議申し立ての機会が与えられています。

詳しくは、こちら。  https://ipp.alibabagroup.com/

知的財産権侵害で出品が削除された事例 (taobao.com)
ところで、alibabaでの申告に対する処理は、審査の担当者によって判断が若干異なることがあります。
例えば、商標登録の指定商品と出品のカテゴリが一致しないと削除しないという場合もあれば、カテゴリにとらわれずに、実質的に指定商品の範囲かどうかを判断する担当者もいます。運悪く前者のような担当者に当たってしまった場合は、(指摘事項を詳しくするなど)再度表現を変えて申告することとなります。

2017年9月16日土曜日

EUTM 欧州商標 (旧CTM) の表示変更登録を自分でやってみた

欧州商標(EUTM)は、欧州経済領域(EEA)の域内全てで有効なので、たいへん使い勝手がよいです。

うちの場合は、欧州内の関連会社との共同出願だったのですが、欧州法人がオンラインで本人出願しました。(コストの問題で、弁理士にはお願いしませんでした。出願人のうち一人でもEEA内に住所があれば、EEAの現地代理人をたてないで本人出願できます。)

さきほど、日本法人の本店移転に伴い、EUTMの表示変更登録を日本側で直接オンラインで申請してみました。(今回もお金がないので、自力でやってみた。)

*商標のほか、デザインなどの権利者・当事者の住所の変更も同じ方法です。

EUTMの場合は、日本で言うところの「識別番号」の「住所(居所)変更届」に相当する申請をすることで、同じ権利者に関連する知財の登録(原簿の権利者)や出願、申請、申立などの当事者のアドレスが同時に変更されます。(変更申請を送信する前に、影響のあるファイリングが警告として表示されます。)

(ログインアカウントの作成)

欧州法人は、出願時にオンライン・アカウントを開設したので、member ID のほかに、ログインIDとパスワードを既に持っています。日本法人は、識別番号に相当する member ID しかありません。

ログインアカウントは、EUIPOのホームページにある Create new user account から行います。

このとき、"Have you made a previous application with the EUIPO?" の質問に "Yes" と答えると、本人か代理人かの質問が出てくるので、"Company/Individual"を選択し、その後、member ID か名前をタイプして、自分の番号と名前を選びます。

2017年9月15日金曜日

謎のシステム Amazon Brand Registry

アマゾンには、Amazon Brand Registry (アマゾン・ブランド登録)という商標権者(又はその代理人)だけが登録できる知財保護のためのプラットフォームがあります。登録すると、オンラインで文字検索のほかに画像検索もできて、侵害品を報告できるツールを使用することができるようになります。

原則として、各マーケットプレイスごとに(たとえばUS、日本、EUなど)それぞれアカウントとブランドの登録が必要で、いずれかの法域で商標が登録されていれば、どのマーケットプレイスのレジストリにも登録が可能です。(当社では、欧州商標権に基づいてUSマーケットプレイスのレジストリにも登録しています。)

ところが、侵害品の報告は、それぞれの法域の商標権に応じたマーケットプレイスに対して(EUTMならEUマーケットプレイスの侵害品の出品について)行う必要があります。しかし、これが文書化されたルールかというと怪しくて、当社のUSのブランド登録アカウントを使って、EUTMに基づいて、USマーケットプレイスで販売されている侵害品の出品(ASIN)の削除請求が、たまに認められることがあります。

最初は、出品者や販売対象にEUの法域が含まれていれば、請求を認めるのかと思ったのですが、どうやらそうでもなさそうです。Amazonの担当者によって、USPTO登録の商標に限ると言う場合もあれば、そうではなく、アマゾンにブランド登録した他法域の商標権で足りるとする場合もあり、侵害品の申告の取り扱いに差があるのです。

特に、米国 amazon.com は世界中のセラーが世界中の消費者を対象に商品を販売していますから、米国商標を侵害報告の必須要件としていては、偽物を売っている連中にとっては、なんとも平和な世界ですし、消費者にとっては、恐ろしく危険なマーケットということになりかねません。

eBay でも同様のブランド登録制度 (VeRO) があるのですが、商品流通の実態があれば、よほどマイナーな法域の商標でないかぎり、登録が可能です。しかし、アマゾンと違って、登録済みのブランドオーナーは、どの法域のマーケットプレイスの出品でも、出品削除の請求ができます。(以前、ヨーロッパ各国とオーストラリアの eBay は、当該国で有効な商標権がないと門前払いだったことがあるようですが、現在は改められています。)違う法域で登録された同じブランドの商標権の優劣問題なども起こりうるかと思いますが、おそらく解決するルールがあるのでしょう。

米国アマゾンの法務部に、「国外の商標権があれば、米国商標がなくても、登録済みのブランドオーナーからの侵害品の削除請求に対応してほしい」とお願いしたのですが、どうやらムリのようです。(Brand Registry のサポート担当から、法務部にエスカレーションしてもらいました。何日かたってから、ダメとの回答。)商標権の効力の問題というよりは、消費者保護の観点から、このような請求を認めるように、出品規約を改める必要があるように思います。

インターネット時代の越境通販にうまく対応した eBay の知財対策と違って、オンライン通販のトップだというのに、アマゾンは、まだまだ時代遅れの感じがします。

2017年9月14日木曜日

真正品のリパッケージ(小分け・詰め替え)

当社では、よく売れる商品(主に消耗品)については、単品だけでなく5コパックや50個パック(バルク品)などでも展開しています。また、海外と日本で同時展開している商品が日本に輸入されて、小売されることもあります。

これらバルク品や輸入品を、詰め替え、小分け又は再包装した商品(いわゆる「リパッケージ品」)が、弊社の商品として(当社のGTINコードに紐付けられたカタログに相乗りで)販売されることが非常に多くなりました。

このようなリパッケージ品には、当社の商標が付されているか、又はオンライン販売の商品説明文に当社の商標が用いられています。

私が扱った事案では、アマゾンジャパンは、このような出品を強制削除しています。他方、ヤフーショッピングや楽天では、GTINなどのソースマーキング(JANコードなど)が出品に必須ではなく、単品のまとめ売りとリパッケージ品を区別するルールと仕組みがないことから、このような出品を抑止するのは難しいようです。


ところで、リパッケージ品が商標権を侵害するかについては、いわゆる「マグアンプK事件」(又は「マグァンプK事件」。大阪地判平成 6 年 2 月 24 日)の裁判例などが参考となります。

肥料(MagAmp K = 「マグァンプK」)のドラム缶入りバルク品を輸入し、小瓶に小分け・再包装したものに類似商標(「マグアンプK」)を付して販売した事例。
 元の包装(ドラム缶)から中身だけを取り出したもの(商標を取り除いたもの)に、再度商標(本件では類似商標)を付けています。
 類似商標を小分け品に付けた行為だけでなく、小分けするときに商標権を取り除いた行為も商標権侵害となるかが争点となりました。
 従前の裁判例では、リパッケージによって商品の品質に影響する(変質や異物混入など)可能性が排除できないので、リパッケージは商標権者の信頼を損ないかねない行為であって、商標権を侵害するとしたものがあります。しかし、本件では、品質への影響の有無にかかわらず、このような行為は商標権を侵害するとしています。

このことについて、特許庁の研修テキストでは、次のように一般化して説明しています(傍線筆者)。
権利侵害の成否を商品の出所の真正や商品の性質、包装の仕方、包装材の材質等具体的事例における個別事情に依存させると、商標権者の利益の救済は複雑になるばかりであり、商標の識別機能が侵害される。即ち、このような流通段階における第三者の小分け、詰め替え、再包装行為等は、商標権者が登録商標を指定商品に独占的に使用する行為を妨げ、その商品標識としての機能を途中で抹殺するものであって、商品の品質と信用の維持向上に努める商標権者の利益を害し、ひいては需要者の利益を害する結果を招来する恐れがあるから、登録商標の侵害を構成する。結局、商標権者自身か、その許諾を得た者のみが、小分け、詰め替え、再包装等を行える。(『商標権紛争とその対応(2010)』, p.10)


また、輸入品を国内で販売されている正規品として、あるいはそれと誤解されるような表示を用いてオンラインで販売することは、不正競争防止法2条1項1号(他人の商品等表示を使用した商品を譲渡若しくは引渡しのために電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為)にあたることもあります。

2017年9月10日日曜日

商品をデッドコピーされた場合の対応

うちの会社の商品の模倣品や偽造品が大量に(しかも世界中に)出回っていて、主にネットショッピングで大量に販売されています。

最近特に困っていることですが、ドロップシッピング(英語だと product sourcing 又は drop shipping と言います。)でも偽造品が扱われるようになって、ネット通販業者だけでなく、素人も気軽に偽物の販売に(故意はないのでしょうが)加担するようになってきました。

ネット通販の場合、すべての出品を現物確認することは困難ですが、ネットの商品画像と商品説明を頼りに商標権や意匠権に基づく権利を行使して、ネット通販の主要マーケットプレイス(たとえば、アマゾン、ヤフーショッピング、ヤフオク、楽天、eBayなど)に「出品強制削除」などの対応を求めることは、さほど難しくありません。

(なお、特許権に基づく請求は試売しないと難しいですし、マーケットプレイスによっては、商標権とは異なる申立方法を別に定めています。)

また、商標権などの登録がない場合でも、うまく説明(主張・立証)できれば、不正競争防止法(商品形態模倣など)に基づく申し立てを受け付けるマーケットプレイスもあります。

なお、各主要マーケットプレイスには、それぞれ独自のブランド登録制度があり、比較的簡便な方法(特別なレポートツール)で商標権侵害等を申告できるようになっています。商標権をもっている製造者(又はその代理人)が頻繁に申告する場合は、ぜひブランド登録をしてみてください(今回は、この点には触れません。)うちの会社も、各社でブランド・オーナーとして登録されているので、商標権に基づく申し立てをする場合は、特別な方法でレポートしています。

商標権が登録されている場合

商標が使われているデッドコピーの場合

アマゾンジャパン、ヤフーショッピング、ヤフオク、楽天で、商標権に基づいて出品の削除を請求できます。

eBay

また、 eBay では、商標権登録の対象法域 (jurisdiction) が異なる場合でも、出品の差止を請求できることがあります。(例えば、日本の商標権の権利者が、米国の ebay.comに掲載されている中国からの出品の削除を求めるなど。)

Amazon

Amazonについては、地域別に侵害品の対策部署が異なり、その地域(アマゾンでいう「マーケットプレイス」)をカバーする権利がないと、侵害品の出品削除の申し立てができません。

  • 例えば、日本の商標法に基づく商標権者(又はその代理人)は、日本のマーケットプレイス(Amazon.co.jp)の出品に対して知的財産権侵害の申立ができますが、USマーケットプレイス(amazon.com --アメリカ、カナダ、メキシコなどまとめて1つのマーケットプレイス)やEUマーケットプレイス(amazon.co.ukほかEU商標法のカバーする各サイト共通)に対しての申し立てはできません。このようなアマゾンの原則については、商標権以外の知的財産権侵害の申し立てにおいても同様です。

商標が一部改ざんされているデッドコピーの場合

「類似商標」に該当すれば、「商標が使われているデッドコピーの場合」と同様に主要マーケットプレイスが対応してくれます。しかし、類似かどうかは主観的な要素ですので、マーケットプレイスによっては、商品全体の画像対比を含めて、丁寧な主張立証を求められる場合があります。

当社の場合、文字と単語が5割一致や、音節が3分の2一致するデッドコピー品をアマゾンやeBayなどで侵害品として認められた事例があります。

商標を隠して出品しているデッドコピーの場合

商標部分を隠した出品 (eBay)
各マーケットプレイスともに、試買した実際の商品に商標が含まれていれば、その画像を示すことで商標権侵害として対応してくれます。

なお、試買しない場合でも、商品形態模倣行為や周知表示混同惹起行為(不正競争防止法違反)として対処してくれるプラットフォームもあります。

  • Amazon できる
  • Yahoo できない →くわしくは,下記

意匠権も商標権も登録されていないが、デッドコピーの場合

商標の部分を塗抹して出品された商品 (eBay)
国内上市から3年以内であれば不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣行為として、3年を経過して需要者に広く認知されている場合であれば同項1号の周知表示混同惹起行為に該当しないか検討します。

前述の「商標を隠して出品しているデッドコピーの場合」も同様に、不正競争防止法を根拠にマーケットプレイスに申告できる場合があります。

商品形態模倣行為や周知表示混同惹起行為に対する侵害申告が受理されるかどうか、さらに、どの程度の主張・立証が必要かは、各マーケットプレイスごとに違いが大きい部分です。オンラインでいきなり申請する前に、最初のうちは、侵害品の差止を求める詳細な内容の文書を郵送して、各マーケットプレイスの対応を見ることをお勧めします。(例えば、法文どおりの要件事実に従って細かく説明することが求められる場合もあれば、侵害品と真正品の写真の対比と簡単な説明だけで出品削除の請求が認める場合もあります。)

アマゾンジャパンの場合

アマゾンジャパンの場合、不正競争防止法に基づく申告は、文書又はオンラインで申告可能です。「知的財産権侵害についての申し立てとその手続き」(https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201995100)のページには、下記のように商標権と意匠権のみオンラインで申告できると読める記述がありますが、実際には、その他の知的財産権に基づく申告が可能です。

オンラインによる申告商標権または意匠権を侵害された場合は、オンラインで申告できます。商標権または意匠権の侵害を報告 から申告してください。商標権及び意匠権以外の権利侵害の報告につきましてはオンラインでの申告を承っておりませんので、下記書面による申告をしてください。




ただし、オンラインでは文字数に限りがあり、添付ファイルをつけることができないなどの制約がありますので、最初のうちは郵送での申告をお勧めします。

eBayと日本以外の Amazon の場合

それぞれの国の法律に基づいて申告します。(日本の不正競争防止法に基づく請求はできません。)なお、amazonとeBayのどちらも、念書や契約書などの私文書に基づく申告や、当事者間にしか効力が及ばない合意(独占販売契約など)に基づく申告は受理されません。(日本で侵害品に対する差止の仮処分や確定判決、公正証書など公の文書があって、その当事者が当該マーケットプレイスに出品していれば、対応してくれるかもしれません)。

日本の商品形態模倣行為を禁止する法律に類似するものとして、米国商標法には "trade dress" の規定(Section 43(a) of Lanham Act)があり、米国での登録がなくても保護されます。しかし、eBayとamazon.comは、USPTOに登録のない trade dress については、(当社の経験では)申告を認めていないようです。

(著作権について、 amazon.com は US Copyright Office の登録がなくても侵害の申告を受け付けることがあります。-> Claim Copyright Infringement

ヤフオク、ヤフーショッピングの場合

オンラインで不正競争防止法に基づく出品削除を請求できます。しかし、請求が認められることがあったりなかったりと、反応が一定ではありません。(ヤフーの担当者の違いによるのかも?)アマゾンジャパンと比較して、非常に困ったことに、ヤフーは、不正競争防止法により保護される権利の侵害については、取り締まりが非常に緩いです。