2017年9月10日日曜日

商品をデッドコピーされた場合の対応

うちの会社の商品の模倣品や偽造品が大量に(しかも世界中に)出回っていて、主にネットショッピングで大量に販売されています。

最近特に困っていることですが、ドロップシッピング(英語だと product sourcing 又は drop shipping と言います。)でも偽造品が扱われるようになって、ネット通販業者だけでなく、素人も気軽に偽物の販売に(故意はないのでしょうが)加担するようになってきました。

ネット通販の場合、すべての出品を現物確認することは困難ですが、ネットの商品画像と商品説明を頼りに商標権や意匠権に基づく権利を行使して、ネット通販の主要マーケットプレイス(たとえば、アマゾン、ヤフーショッピング、ヤフオク、楽天、eBayなど)に「出品強制削除」などの対応を求めることは、さほど難しくありません。

(なお、特許権に基づく請求は試売しないと難しいですし、マーケットプレイスによっては、商標権とは異なる申立方法を別に定めています。)

また、商標権などの登録がない場合でも、うまく説明(主張・立証)できれば、不正競争防止法(商品形態模倣など)に基づく申し立てを受け付けるマーケットプレイスもあります。

なお、各主要マーケットプレイスには、それぞれ独自のブランド登録制度があり、比較的簡便な方法(特別なレポートツール)で商標権侵害等を申告できるようになっています。商標権をもっている製造者(又はその代理人)が頻繁に申告する場合は、ぜひブランド登録をしてみてください(今回は、この点には触れません。)うちの会社も、各社でブランド・オーナーとして登録されているので、商標権に基づく申し立てをする場合は、特別な方法でレポートしています。

商標権が登録されている場合

商標が使われているデッドコピーの場合

アマゾンジャパン、ヤフーショッピング、ヤフオク、楽天で、商標権に基づいて出品の削除を請求できます。

eBay

また、 eBay では、商標権登録の対象法域 (jurisdiction) が異なる場合でも、出品の差止を請求できることがあります。(例えば、日本の商標権の権利者が、米国の ebay.comに掲載されている中国からの出品の削除を求めるなど。)

Amazon

Amazonについては、地域別に侵害品の対策部署が異なり、その地域(アマゾンでいう「マーケットプレイス」)をカバーする権利がないと、侵害品の出品削除の申し立てができません。

  • 例えば、日本の商標法に基づく商標権者(又はその代理人)は、日本のマーケットプレイス(Amazon.co.jp)の出品に対して知的財産権侵害の申立ができますが、USマーケットプレイス(amazon.com --アメリカ、カナダ、メキシコなどまとめて1つのマーケットプレイス)やEUマーケットプレイス(amazon.co.ukほかEU商標法のカバーする各サイト共通)に対しての申し立てはできません。このようなアマゾンの原則については、商標権以外の知的財産権侵害の申し立てにおいても同様です。

商標が一部改ざんされているデッドコピーの場合

「類似商標」に該当すれば、「商標が使われているデッドコピーの場合」と同様に主要マーケットプレイスが対応してくれます。しかし、類似かどうかは主観的な要素ですので、マーケットプレイスによっては、商品全体の画像対比を含めて、丁寧な主張立証を求められる場合があります。

当社の場合、文字と単語が5割一致や、音節が3分の2一致するデッドコピー品をアマゾンやeBayなどで侵害品として認められた事例があります。

商標を隠して出品しているデッドコピーの場合

商標部分を隠した出品 (eBay)
各マーケットプレイスともに、試買した実際の商品に商標が含まれていれば、その画像を示すことで商標権侵害として対応してくれます。

なお、試買しない場合でも、商品形態模倣行為や周知表示混同惹起行為(不正競争防止法違反)として対処してくれるプラットフォームもあります。

  • Amazon できる
  • Yahoo できない →くわしくは,下記

意匠権も商標権も登録されていないが、デッドコピーの場合

商標の部分を塗抹して出品された商品 (eBay)
国内上市から3年以内であれば不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣行為として、3年を経過して需要者に広く認知されている場合であれば同項1号の周知表示混同惹起行為に該当しないか検討します。

前述の「商標を隠して出品しているデッドコピーの場合」も同様に、不正競争防止法を根拠にマーケットプレイスに申告できる場合があります。

商品形態模倣行為や周知表示混同惹起行為に対する侵害申告が受理されるかどうか、さらに、どの程度の主張・立証が必要かは、各マーケットプレイスごとに違いが大きい部分です。オンラインでいきなり申請する前に、最初のうちは、侵害品の差止を求める詳細な内容の文書を郵送して、各マーケットプレイスの対応を見ることをお勧めします。(例えば、法文どおりの要件事実に従って細かく説明することが求められる場合もあれば、侵害品と真正品の写真の対比と簡単な説明だけで出品削除の請求が認める場合もあります。)

アマゾンジャパンの場合

アマゾンジャパンの場合、不正競争防止法に基づく申告は、文書又はオンラインで申告可能です。「知的財産権侵害についての申し立てとその手続き」(https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201995100)のページには、下記のように商標権と意匠権のみオンラインで申告できると読める記述がありますが、実際には、その他の知的財産権に基づく申告が可能です。

オンラインによる申告商標権または意匠権を侵害された場合は、オンラインで申告できます。商標権または意匠権の侵害を報告 から申告してください。商標権及び意匠権以外の権利侵害の報告につきましてはオンラインでの申告を承っておりませんので、下記書面による申告をしてください。




ただし、オンラインでは文字数に限りがあり、添付ファイルをつけることができないなどの制約がありますので、最初のうちは郵送での申告をお勧めします。

eBayと日本以外の Amazon の場合

それぞれの国の法律に基づいて申告します。(日本の不正競争防止法に基づく請求はできません。)なお、amazonとeBayのどちらも、念書や契約書などの私文書に基づく申告や、当事者間にしか効力が及ばない合意(独占販売契約など)に基づく申告は受理されません。(日本で侵害品に対する差止の仮処分や確定判決、公正証書など公の文書があって、その当事者が当該マーケットプレイスに出品していれば、対応してくれるかもしれません)。

日本の商品形態模倣行為を禁止する法律に類似するものとして、米国商標法には "trade dress" の規定(Section 43(a) of Lanham Act)があり、米国での登録がなくても保護されます。しかし、eBayとamazon.comは、USPTOに登録のない trade dress については、(当社の経験では)申告を認めていないようです。

(著作権について、 amazon.com は US Copyright Office の登録がなくても侵害の申告を受け付けることがあります。-> Claim Copyright Infringement

ヤフオク、ヤフーショッピングの場合

オンラインで不正競争防止法に基づく出品削除を請求できます。しかし、請求が認められることがあったりなかったりと、反応が一定ではありません。(ヤフーの担当者の違いによるのかも?)アマゾンジャパンと比較して、非常に困ったことに、ヤフーは、不正競争防止法により保護される権利の侵害については、取り締まりが非常に緩いです。

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